ハリウッドで映画化希望!
そんな感想を見かけたけれど、私も映像で観てみたいと思った一人である。
しかし、長編小説を二時間に収めようとすると、ちょっと嫌な予感がしてくるので、個人的には海外ドラマが合っているのではないかと。
それぞれのキャラクターを掘り下げるエピソードなどを加えて、全12話くらい。J・J・エイブラムス総指揮、なんてどうだろう?
妄想したついでに、さらに個人的な希望を言うと、大人向けミステリーでありながら若者の正義感というナイーブな側面もあるこの小説は、M・ナイト・シャマラン監督なんかがピッタリだと思うのだけれど……。
何が言いたいかというと『ジェノサイド』は、SF、超常現象などミステリー系の海外ドラマ好きにはたまらない小説であるということ。
ちなみに私は『LOST』から海外ドラマにハマったタイプである。
人類絶滅の可能性
毎日、世界中から重要情報が集まるホワイトハウス。
ある朝、アメリカ大統領、グレゴリー・S・バーンズのもとに情報機関から上がってきた報告書。
『人類絶滅の可能性 アフリカに新種の生物出現』
バーンズは、バインダー・ノートから顔を上げた。
「何だ、これは?ハリウッド映画の要約か?」
そんなプロローグで始まる極上のエンターテインメント。
アメリカ合衆国という超大国と、その上を行くかもしれない未知の領域の存在というスケールの大きさ。
それは良きものなのか?悪しきものなのか?
直接事件に関与する、元アメリカ陸軍特殊部隊の傭兵と、地球の裏側から間接的に関わることになった日本の大学院生。
アフリカでの血なまぐさい現実と迫力、そのリアリティを感じられない場所から成されようとしている、少し頼りない正義。
そこに、すべてをコントロールしようとする、インテリジェンス・コミュニティーが絡み、アメリカと、日本のアパートの一室と、アフリカのジャングルという奇妙な組み合わせで物語は進行する。
そして事態は驚愕の展開へ
予想していたことを越える真相というものは、この手のミステリーには不可欠な要素である。
小説の前半は『未知の生物』や『ハイズマン・レポート』といった魅力的な謎で引きこまれ、後半は、信じていない人間、笑い飛ばしていた人間が、唖然、茫然とするさまを堪能し、事態を軽んじていた者が報いを受ける瞬間を目撃するという快感。
そんなエンターテインメントにおけるカタルシスを見事に提供してくれる。
いくつかのストーリーが少しづつ交わっていき、やがて起る化学反応。
『ジェノサイド』は、本当にあり得るのではないか?と思わせる証拠や可能性を、ロジカルに提示しつつも、読者に難しく考えさせることは無い。
アクションと上手く絡められているせいかテンポも良くて、純粋に娯楽として楽しめる最高の小説であった。