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とっぴんぱらりの風太郎 万城目学

伊賀を追い出された忍び、風太郎

風太郎と書いて、ぷうたろうと読む。

冗談かと思っていたら、本気だった……。


万城目学と言えば、やはり独特なユーモアが魅力の作家。

面白いのは、まぁ当然。しかし、意外と言っては失礼かもしれないけれど、万城目学の小説でこんなに感動するとは思わなかった。

以前、『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』を読んだ時に「こんな小説も書くのか!」と驚いたことがあったけれど、『とっぴんぱらりの風太郎』は過去作やエッセイなども含めて、万城目学の集大成な大作に仕上がっていると思う。


煮え切らない男の、最後の決断

伊賀への未練を残しつつ、京で日々ぶらぶらしている風太郎。

忍びとしては落ちこぼれとして描かれているが、そんな風太郎から見た腕の良い忍びたちも、教えを受けた先達も、実はみんな身の振り方や生き方に迷っている。

忍びという職業が必要とされなくなっていく時代。

現代の人間となんら変わらない。そんなことが徐々にわかってきて、忍びのくせに個性的で喜怒哀楽のある登場人物たちのことが、どんどん好きになっていく。

現実と非現実の馴染み方というのだろうか?

そのあたりも万城目作品の魅力だと思うのだが、他の作品と比べても本作『とっぴんぱらりの風太郎』がいちばんバランスが良く、突拍子もない展開に違和感を感じさせない(ような気がする)。

以前から著者の【ひょうたん】に対する並々ならぬ情熱は知っていたけれど、「変わった人だな」程度の感想しか持っていなかった。しかし本作では、時代もその役割も【ひょうたん】がストーリーにピッタリとはまった感があり、ひょうたん的にもまさに集大成である。


絶体絶命に正面から向き合い、そして……。

第一章でがっちりと掴み、第九章できっちり締める。

700ページを超えるような長編小説においては、悪く言えば中だるみ、よく言えば遊びの部分が意外と必要であったりもするけれど、そのあたりは万城目学ならばお手の物。というか、いつもは少しやり過ぎか?

過去作においては、個人的に「ここは笑いに走らないで欲しかったなぁ」という感想を持ってしまった所などがあったけれど、『とっぴんぱらりの風太郎』に関してはまったく気にならなかった。

万城目学の小説には必要不可欠である阿呆なノリと、シリアスさが奇跡の共存。

楽しいと悲しいは、正反対のように見えるけど実はつながっている。

現代とは死生観がまったく違う、歴史ものであることも影響したのかもしれないけれど、

万城目ワールドと感動。

もしかして、けっこう相性が良いのかも。

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